Kyo Nishikawa  西川恭  guitar/vo
2014/06/07(土)

José Feliciano ホセ・フェリシアーノ 公式バイオグラフィー和訳

 

原点回帰とさらなる変革『Señor Bolero』

1997年秋、ホセは自身のキャリアにおける重要作『Señor Bolero』をリリースする。本作はホセの音楽的な原点回帰であると同時に、ホセ初期のボレーロ・サウンドがさらに変革を遂げたアルバムである。ホセは長年に渡り、ボレーロというロマンティックな古典的歌謡を探求し、ついには現代のニュー・スタンダードと呼べる音楽を生んだのだ。

Señor Bolero (1997)

当時のレコード会社ポリグラムはこの極上のボレーロ集を後押しするため、アルバムからの4~6曲のセレクションのリリース企画など、大々的なプロモーションを行った。これに対する世間の反応は大きく、『Señor Bolero』は発売開始から最初の2週間で、2年前に発売された前作のスペイン語アルバムの売り上げ記録を突破した。アルバムからの最初のシングルカット「Me Has Echado Al Olvido」はニューヨークを中心に中南米諸国でチャートトップを記録。アルバムは発売6週間を待たずにアメリカ本国及びプエルトリコでプラチナディスクを獲得した。またほどなくしてNARAS(ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)の年間最優秀ラテンポップアルバムにノミネート。ホセにとっては16回目のグラミーノミネートであった。『Señor Bolero』はアメリカ本国、プエルトリコ、ヴェネズエラでダブル・プラチナを、メキシコ、コスタリカ、アルゼンチンでゴールドディスクを獲得した。

2000年代に入り、Los Premios Globosの“アーティスト・オブ・ミレニアム賞”、ALMAアワードの特別功労賞(ライフタイム・アチーヴメント)の受賞というビッグニュースとともに、ホセはニューミレニアムに突入した。この2つの新たな賞が、自宅スタジオの壁に並べられる数々の受賞コレクションに加わったのだが、スタジオを訪れた者は自身の目で、驚嘆の念をもってそこに見ることができるだろう。それは、これまで50年に渡ってホセを包み込んでくれた、世界中のファンと音楽業界の大きな大きな愛の歴史なのである。

2000年代『A México… con Amor』『Señor Bachata!』

ホセのキャリアの後半は、新たな音楽ジャンルを切り拓くための構想をもって始まった。2005年、メキシコ、マリアッチの音楽をあつかったアルバム『A México… con Amor』をリリース。このアルバムでホセは、以前にボレーロの美しさに光をあてたのと同じ手法で、メキシコの人々とその音楽への親愛の情を表現した。ホセ・エルナンデスによるオーケストラ・アレンジで、古典音楽をコンテンポラリー感覚をもって仕上げた堂々たるメキシコ音楽集は、メキシコからモロッコまで、メルボルンからマイアミまで、世界のリスナーを魅了した。

2006年9月ワシントンD.C.のケネディセンターで、ホセは「ヒスパニック文化遺産基金」から特別功労賞を受けた。オスカー・デ・ラ・レンタ、セリア・クルース、ラウル・ジュリアら過去の受賞者の仲間に加わることとなり、英Gala、米NBC、米=プエルトリコTelemundo各社でテレビ中継される中、ホセはこの受賞という愛情の証を前にたいへんな名誉を感じていた。真の意味で、ホセは現代の“クロスオーバー”アーティスト、バイリンガル・イコンとなり、世界がその事実を認識しはじめたのである。

2008年、音楽的な境界をさらに広げる機会が訪れた。今度はドミニカ共和国の代表的な音楽であるバチャータをとりあげたのだ。今回のアルバムは、もはや定番となった「セニョール・シリーズ」として、『Señor Bachata!』と名付けられた。Billboard.comのレイラ・コボ Leila Cobo はこう評した。「ひとつのスタイルを確立したアーティストが別のスタイルに身を沈めることは、常に大いなる挑戦である。本作でポップスとバチャータ――おそらく長年のキャリアの中でも異ジャンルであろう音楽を行き来したことは、ホセの高い音楽性・芸術性を示す何よりの証であろう」

ホセにとって、また音楽シーンにとっても感動的な重要作となった『Señor Bachata!』はその年、LARAS(ラテン・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)によるベスト・コンテンポラリー・トロピカル・アルバム賞、そしてNARAS(ナショナルアカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス)によるベスト・トロピカル・アルバム賞の2つのグラミーを受賞した。

この2つのグラミー受賞をもって、ホセは40年以上に渡りメジャーシーンでアルバムを発売しグラミーを獲得するという、類い稀な存在となった。それもホセの場合は、英語圏とスペイン語圏の両文化においてのことである。その結果として、2011年11月、LARASはホセの業績を称え名誉ある特別功労賞(ライフタイム・アチーヴメント)を授けた。ホセは今や、生涯を通してエンターテインメントの世界に多大なる貢献を果たした精鋭たちの仲間入りを果たしたのだ。

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Release date:2014/06/07(土)