懐かしい歌をギター生伴奏で

時の流れ、栄枯盛衰、無常感にひたすら浸っていたいと思わせる名曲です。

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古城

 
1959年(昭和34年)三橋美智也
作詞:高橋掬太郎
作曲:細川潤一

松風さわぐ 丘の上
古城よひとり 何しのぶ
栄華の夢を 胸に追い
ああ 仰げばわびし 天守閣

崩れしままの 石垣に
哀れをさそう わくら葉や
矢弾のあとの ここかしこ
ああ むかしを語る 大手門

甍は青く 苔むして
古城よひとり 何しのぶ
たたずみおれば 身にしみて
ああ 空ゆく雁の 声悲し

 

作詞は「酒は涙か溜息か」で知られる高橋掬太郎氏。地誌・風土、民俗学への深い造詣に基づく、史実や文芸をモチーフとした作品を多く手がけています。

昭和34年に三橋美智也さんの歌で大ヒットした「古城」は、この時期、同じ作曲家・細川潤一氏と組んで発表した「あゝ七尾城」「あゝ大阪城」「あゝ鶴ヶ城」「あゝ城山」と並ぶ、言うなれば《古城シリーズ》の代表曲でもあります。

歌詞に描かれる情景は能登の七尾城に重なるもので、民謡歌手の斉藤京子さんが歌った「あゝ七尾城」と発表時期も同じ。七尾城をモデルとしたものと見るのがごく自然なことですが、高橋掬太郎氏はあくまで「古城は聴く人がそれぞれ心に描く城」としました。作者は「古城」という歌を、より普遍的な抒情性を持つ大衆の歌としておきたかったのでしょう。

作曲の細川潤一氏は福岡県出身の作曲家。同郷の古賀政男さんに憧れて独学でギターと作曲を勉強したそうです。

三橋美智也さんの楽曲を多く手がけており、ザ・ドリフターズの志村けんさんによるリメイクが知られる「東村山音頭」のオリジナル版(歌・三橋美智也)も細川氏の作曲です。

【参考文献】
松尾健司『うたのいしぶみ:文学紀行 日本歌謡碑大系』(ゆまにて)※1
三橋美智也『ミッチーの人生演歌』(翼書院)※2
※1・2:国立国会図書館デジタルコレクション


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2021/03/07(日)