詩人・鹿島鳴秋氏は、同じく童謡詩人の清水かつら氏(叱られて、靴がなる、みどりのそよ風)とともに雑誌『少女号』の編集に携わり、童謡「浜千鳥」は大正8年にこの雑誌で発表されました。
冬の浜辺で親を探し求めて鳴く千鳥の姿を歌った、哀しくも幻想的な童謡は、作詞者・鹿島鳴秋氏自身の、親を慕う心情が重ねられています。
鹿島鳴秋氏は、6歳の時に父親が失踪し、まもなく母は他の家へと再婚し、祖父母に引き取られるもやがて祖父は他界、その後、女手ひとつで育ててくれた祖母も鳴秋氏が21歳の時に亡くなります。このような生い立ちの中で、詩人の心の内には父母への思慕が強くあったようです。
また、昭和9年にひとり娘を病気で亡くした時には、その哀しみの中で、自身の作詞した「浜千鳥」に娘の姿を重ね、「今頃娘は自分を探しているのではないか」という想いがわきあがったといいます。
よせてはかえす波のようなアルペジオ(分散和音)と、夢かうつつか惑うような半音を交えた和声の進行で、詩のみならず音楽的な側面からもファンタジーの色合いが表現されているように感じられる曲です。
【参考文献】
渋谷清視・著『童謡さんぽ道 上』(鳩の森書房)
上笙一郎ほか・著『童謡のふるさと 上』(理論社)
※国立国会図書館デジタルコレクション

