懐かしい歌をギター生伴奏で

瀧廉太郎は心の故郷である大分県竹田氏の岡城を思い、作詞の土井晩翠は仙台の青葉城あるいは会津の鶴ヶ城を描いたとされます。

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荒城の月

 
明治34年(1901年)
作詞:土井晩翠
作曲:瀧廉太郎

春 高楼の 花の宴
めぐる盃 かげさして
千代の松が枝 わけ出でし
むかしの光 いまいずこ

秋 陣営の 霜の色
鳴きゆく雁の 数見せて
植うる剣に 照りそいし
むかしの光 いまいずこ

今 荒城の 夜半の月
かわらぬ光 誰がためぞ
垣に残るは ただ葛
松に歌うは ただ嵐

天上 影は 変わらねど
栄枯はうつる 世のすがた
写さんとてか 今もなお
ああ荒城の 夜半の月

 

明治14年『小学唱歌集』の発行により、西洋の音楽をとり入れた唱歌教育がスタートしましたが、まだまだ一般の人々が「音楽」などというものの意義について決して意識的でなかった時代、指導する教師の確保もままならず、実際には唱歌の授業が行われない学校も多くありました。

特に中学校においては教師はもちろん、題材となる歌曲も少なく、そうした状況の中で東京音楽学校の教師たちは、自らの手で音楽教育の質と芸術性を高めていくことが音楽の府としての責任であると考えます。

こうして、西洋音楽を規範としつつ現代性も備えた、若者が共感できる歌を作るべく、著名な文学者や教育者に作詞・作曲を委嘱(いしょく)し、さらに学生たちからも作品を募集し、200曲以上を集めた中から優秀作38曲を選定した『中学唱歌』が明治34年に東京音楽学校より発行されました。

当時学生だった瀧廉太郎が応募用に作った三曲「豊太閤(ほうたいこう)」「箱根八里」「荒城の月」はすべて採用され、ここに収められました。

【参考文献】
堀内敬三・井上武士 『日本唱歌集』 (岩波書店)
宮瀬睦夫 『滝廉太郎伝』 (関書院) ※
※:国立国会図書館デジタルコレクション


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2025/09/23(火)