「いつでも夢を」「寒い朝」とならぶ吉永小百合さんのデュエットソングの名曲です。「いつでも夢を」は橋幸夫さんと、「寒い朝」はマヒナスターズとの共唱でしたが、本曲のパートナーは三田明さん。
歌われているのは、日々のくらしをたいせつにしていく先に大きな幸せがあるというひたむきでまえむきなメッセージ。1コーラスが「長調→短調→長調」という構成になっていて、それにより歌詞の雰囲気がいっそうひきたてられながら、軽快なテンポで曲が進んでいきます。自然と手拍子したくなるような曲調です。
三田明さんがラジオ番組で語ったエピソード(※参考文献)によると、この歌は「どこかの銀行からの依頼の歌だった」のだそうです。他の一般の方のブログ記事等でも、銀行協会(または郵貯、信用組合)の推薦歌だったように記憶しているとの記述があります。なるほど、歌詞にある「つぼみ」「根っこ」「花」「実」「花園」が、お金にまつわる事柄の例えだとすると、面白いような興醒めのような複雑な気持ちになりますが、そうした制作のきっかけを越えて曲は大ヒットしたのです。
曲のヒットを受け、由起しげ子氏の小説『ヒマワリさん』を原作とする映画も製作されました。物語は、とある僻地の村に赴任した吉永小百合さん扮する保健婦さんが、村にはびこる貧困と不衛生、政治や宗教的な対立に翻弄されながらも、信念を持って奮闘していくドラマです。
本曲の作詞者・西沢爽氏による、同じようにささやかな幸せをテーマにしたデュエットソングに昭和38年の「星空に両手を」(作曲:神津善行、歌:島倉千代子/守屋浩)もあります。
【※参考文献】
𠮷田正:誰よりも君を愛す(ミネルヴァ日本評伝選)
金子勇・著(ミネルヴァ書房)

