昭和22年3月に教育基本法が交付され、5月3日には日本国憲法が施行。これにともない、音楽の教科書も新しい方針で作り直されました。軍国主義的な内容は除かれ、また一部の文語調の歌詞はわかりやすさを重視して口語的な平易な表現に改められました。
また、明治43年の『尋常小学読本唱歌』以降、いわゆる「文部省唱歌」は日本人による作詞作曲作品に限られていましたが、この度の改訂からは外国曲も取り入れられるようになり、古関吉雄氏作詞による「思い出(原曲:Long long ago)」や勝承夫氏作詞による「灯台守(原曲:The Golden Rules)」など、現在まで愛唱される外国曲由来の歌も教科書に掲載されました。『中等音楽(一)』に収められた「冬の星座(原曲:Mollie Darling)」もそのひとつです。
あまり知られていませんが、堀内敬三氏の作詞による「冬の星座」は、昭和11年(1936年)に、現在歌われているものとは若干異なる歌詞で、弘田龍太郎・編『新音楽教科書・巻二』(冨山房)に収められています。タイトルは同じ「冬の星座」で、当時の歌詞は次のとおりです。
1.
風落ち月無く 冴ゆる空より
地上に降りしく 奇(くす)しき光よ
萬象(ものみな)ねむれる 沈黙(しじま)のなかに
数えもつくせぬ 星座はめぐる
2.
無窮の時をば 北斗は指して
無限の宇宙に 銀河は横たふ
躍れるオリオン 群れ住む昴
煌き搖れつゝ 星座はめぐる
おそらくこの歌詞を原型として、戦後の新教育法の方針に照らしてやさしい表現に改訂したのが、現在知られる「木枯らしとだえて〜」の歌詞ということになるのでしょう。
ちなみに、原曲である「Mollie Darling」は、アメリカの詩人/作詞家/作曲家ウィリアム・ヘイス(※唱歌「故郷の廃家」の原曲「My Dear Old Sunny Home」の作曲者)が1872年に発表したポピュラーソングで、現在でもカントリーシンガー中心に多くの歌手にカヴァーされています。内容は「冬の星座」とはまったく異なるラブソングです。

