懐かしい歌をギター生伴奏で

春のおとずれを詩的に表現した味わい深い歌詞です。

曲名右の  ボタンから演奏動画を視聴できます。

霞か雲か

 
1883年(明治16年)
日本語歌詞:加部巌夫

かすみか雲か はた雪か
とばかりにおう その花ざかり
ももとりさえも 歌うなり

かすみは花を へだつれど
へだてぬ友と きてみるばかり
うれしき事は 世にもなし

かすみてそれと みえねども
なく鶯に さそわれつつも
いつしか来ぬる はなのかげ

 

ドイツの童謡「小鳥たちがやって来た」に日本語歌詞をのせた、いわゆる翻訳唱歌です。明治16年3月発行の『小学唱歌集 第二編』に収められました。原曲はドイツではたいへんよく知られている春の童謡なのだそうです。

作詞者の加部巌夫(かべ いずお)氏は宮内省・御歌所に務めた宮中歌人。大槻文彦氏、里見義氏とともに「仰げば尊し」の作詞にもたずさわっています。

歌われているのは春到来の情景。遠くに見える桜を歌いながらも「さくら」の語は使わないあたり、なんとも心にくい。二行目の歌詞「とばかり匂う」の「とばかり」は、《ちょっとの間、しばし》を意味する古語。元来小学唱歌なのですが、年齢をかさねるほどに深い味わいを感じることのできる歌詞です。

昭和22年には勝承夫氏による新しい歌詞で音楽教科書に掲載されました。こちらの歌詞に親しんだかたも多くいらっしゃるかと思います。「霞か雲か ほのぼのと」ではじまるこちらの歌詞は、子どもにわかりやすい平易な表現となり、はっきり「さくら」と言及しています。こちらはこちらで歌詞のとおり「ほのぼのと」した春のあたたかさがあらわれている印象です。


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2023/04/15(土)