懐かしい歌をギター生伴奏で

テノール歌手・田谷力三さんの生涯のレパートリーとなった「恋はやさし野辺の花よ」

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恋はやさし野辺の花よ

 
1915年(大正4年)田谷力三
訳詞:小林愛雄
作曲:フランツ・フォン・スッペ

恋はやさし 野辺の花よ
夏の日のもとに 朽ちぬ花よ
熱い思いを 胸にこめて
疑いの霜を 冬にもおかせぬ
わが心の ただひとりよ

胸にまことの 露がなけりゃ
恋はすぐしぼむ 花のさだめ
熱い思いを 胸にこめて
疑いの霜を 冬にもおかせぬ
わが心の ただひとりよ

 

原曲はオーストリアの作曲家フランツ・フォン・スッペによるオペレッタ『ボッカチオ』で歌われるアリア「Hab ich nur deine Liebe」です。劇中では、詩人ボッカチオとヒロインのフィアメッタが出会う場面で歌われ、二人の恋の予感を示す役割を果たしています。

日本でも最初はオペラの劇中歌のひとつとして登場しました。日本でのオペラのはじまりの場は明治44年(1911年)にオープンした帝国劇場。詩人・翻訳家の小林愛雄(あいゆう)氏による「恋はやさし野辺の花よ」もこの舞台から生まれました。

日本オペラはその後、舞台を赤坂のローヤル館という劇場に移します。そこに参加したテノール歌手・田谷力三さんのボッカチオは、聴衆の大喝采を浴びる当たり役となり、「恋はやさし野辺の花よ」は田谷力三生涯のレパートリーとなりました。

ちなみにドイツ語の原詩は《あなたが私を愛してくれるなら、いつわりの愛でも構わない。いつかそれが真実になるまで、愛を大切に育てていきましょう》といった意味の内容です。わたしたちがよく知るストレートにロマンチックな日本語歌詞とは少々表現のニュアンスが異なるようですが、愛という不確かなものを、それでも信じましょうというメッセージは、これもまた真実味のあるラブソングだと感じます。

Hab ich nur deine Liebe (1879)
Franz von Suppè

1.
愛してくれさえするのなら
いつわりだってかまわない
愛というそのつぼみから
誠はいつか花ひらく

だからその芽を見守って
こわさぬように大切に
花咲きほこるその日まで
誠も嘘もないままに
誠も嘘もないままに

2.
たとえ不実な愛だとて
喜び運ぶことでしょう
けれど愛なき誠なら
誰を笑顔にできましょう

だからその芽を見守って
こわさぬように大切に
花咲きほこるその日まで
誠も嘘もないままに
誠も嘘もないままに

(訳詞:西川恭)


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2025/04/23(水)