懐かしい歌をギター生伴奏で

この時代、東北からの集団就職列車が到着する上野駅は故郷に通じる特別な場所でした。 Photo by Nori Norisa (CC BY 2.0)

曲名右の  ボタンから演奏動画を視聴できます。

あゝ上野駅

 
1964年(昭和39年)井沢八郎
作詞:関口義明
作曲:荒井英一

どこかに故郷の 香りをのせて
入る列車の なつかしさ
上野は おいらの 心の駅だ
くじけちゃならない人生が
あの日ここから はじまった

就職列車に ゆられて着いた
遠いあの夜を 思い出す
上野は おいらの 心の駅だ
配達帰りの自転車を
止めて聞いてる 故郷なまり

ホームの時計を 見つめていたら
母の笑顔に なってきた
上野は おいらの 心の駅だ
お店の仕事はつらいけど
胸にゃでっかい 夢がある

 

あゝ上野駅」は「田園ソング」発のヒット曲です。

「田園ソング」とは雑誌『家の光』とTBSラジオの提携による企画で、毎月推薦曲を選定し、それを「田園ソング」と銘打って雑誌および番組で紹介するものです。2000年代風に言えばマルチメディアでヘビーローテーションというわけです。

『家の光』は1925年(大正14年)5月に創刊された農家向けの月刊誌で、現在も刊行されています。時事問題、料理、健康、子育て、介護、農業、園芸など家庭向けの情報や読み物が掲載されています。

この雑誌で読者から歌詞を募集して作られた「田園ソング」も多くあり、「あゝ上野駅」もそうした歌詞募集歌でした。

高度経済成長期、東北からの集団就職列車は上野駅18番ホームに到着しました。唱歌「旅愁」で空を眺める者、抒情歌「椰子の実」で浜辺にたたずむ者がいたように、故郷を離れて東京で働く若者たちにとって、上野駅は故郷と自分をつないでいる(あるいはへだてている)象徴的な場所だったのです。

配達帰りの自転車を止めて聞いてる故郷(くに)なまり

歌詞のこの部分の前に「上野駅」とつけたしてみると、これはまさしく石川啄木の《ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにいく》の現代版(当時)というべき心にしみる一首です。

作詞の関口義明氏(1940〜2012)は埼玉県羽生市出身の作詞家です。高校卒業後、地方銀行に勤めながら作詞活動を行うなか「あゝ上野駅」が公募1位入選、大ヒットしたのが23才の時でした。その3年後に銀行を退職し、アルバイトをしながら作詞の売り込みをするもなかなか良い結果が出ない。大関・朝潮の歌手デビュー曲「ほたる川」(1984年)に歌詞が採用され、これがヒットしたことでようやく作詞家一本でやっていく決意に至ったのだそうです(日本作詩家協会website – コラム「作詩家への道」より)。


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2023/04/21(金)