懐かしい歌をギター生伴奏で

“昭和モダン”の芳香漂う服部メロディーの黄金期の作品のひとつです。

一杯のコーヒーから

 
1939年(昭和14年)霧島昇/ミス・コロムビア
作詞:藤浦洸
作曲:服部良一

一杯のコーヒーから
夢の花咲くこともある
街のテラスの夕暮れに
二人の胸の ともしびが
ちらりほらりとつきました

一杯のコーヒーから
モカの姫君 ジャバ娘
歌は南のセレナーデ
あなたと二人 ほがらかに
肩をならべて歌いましょ

一杯のコーヒーから
夢は ほのかに香ります
赤い模様のアラベスク
あそこの窓のカーテンが
ゆらりゆらりと ゆれてます

一杯のコーヒーから
小鳥さえずる 春も来る
今宵 二人のほろ苦さ
角砂糖 二つ入れましょか
月の出ぬ間に 冷えぬ間に

 

“昭和モダン”と呼ばれる西洋文化を折衷した新しいライフスタイルが社会に生まれた時代。服部メロディーの黄金期の作品のひとつです。

昭和10年頃にはすでにコーヒーは庶民にも浸透し、東京市内にも相当数の喫茶店があったといいます。ちなみに当時「カフェー」と呼ばれたお店は女給さんの接待を売りとする、今でいうバーやクラブに近い形態のお店で、純粋な喫茶店とは異なるものでした。そうした「特殊喫茶」には規制や取り締まりも行われるようになり、一方いわゆる普通の喫茶店、現在のカフェにつながるお店は「純喫茶」「喫茶店」と呼ばれて分化が進んでいった時期でもあるようです。

この歌が発表された昭和14年当時、時代は日中戦争、戦時体制のもとでコーヒーも贅沢品に指定され、前年にはコーヒー豆の輸入制限も始まっていました。曲の発売は3月か4月だったようですが、9月にはヨーロッパで第二次世界大戦が始まり、いわゆる“昭和モダン”の時代は終焉をむかえます。その後コーヒーの輸入が完全に禁止となり、多くの喫茶店が閉店や業態変更を余儀なくされました。

時代のはざまにあった歌ですが、軽快な曲調と華やかな歌詞の世界は明るさと芳香に満ちています。


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2022/03/05(土)