懐かしい歌をギター生伴奏で

天竜川は長野県から愛知、静岡を経て太平洋へと注ぐ

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勘太郎月夜唄

 
1943年(昭和18年)小畑実・藤原亮子
作詞:佐伯孝夫
作曲:清水保雄

影か柳か 勘太郎さんか
伊那は七谷 糸ひく煙
すてて別れた 故郷の月に
しのぶ今宵の ほととぎす

なりはやくざに やつれていても
月よ見てくれ 心の錦
生まれ変わって 天龍の水に
うつす男の 晴れ姿

菊は栄える 葵は枯れる
桑をつむ頃 逢おうじゃないか
霧に消えゆく 一本刀
泣いて見送る 紅つつじ

 

昭和18年(1943)に公開された東宝映画『伊那の勘太郞』主題歌(監督:滝沢英輔、主演:長谷川一夫、山田五十鈴)。映画は、幕末の時代、土地の親分との争いで三年前に姿を消した勘太郎が、故郷・伊那に戻り、勤王の志士・天狗党の手助けをするという物語です。

昭和18年、戦時中にもかかわらずこうした娯楽映画が公開できた背景には、勘太郎が尊王攘夷派の手助けをするというストーリー展開により、当局の検閲を通ったことがあるようです。

この映画や曲が作られたきっかけには、次のようなエピソードが作詞家・藤浦洸氏のエッセイで語られています。

『大菩薩峠』『無法松の一生』を手がけ、日本映画の基礎を築いたと言われる映画監督・稲垣浩氏は《イナカン》のニックネームで呼ばれていました。当時、銀座のバーに集い、語らっていた映画界・レコード界の仲間の間で「《イナカン》をもじって『伊那の勘太郎』とか何かの物語を作ってはどうか」と盛り上がったというのです。

歌詞に出てくる「天竜川」は、長野県から愛知県、静岡県を経て太平洋へと注ぐ長さ213km、日本で9番目の長さの川です。天竜川という名称は、元々は、天から降った雨が諏訪湖へ流れ出て川の流れとなることから「あめのながれ」と呼ばれ、のちに「天流」と音読みされるようになった、という説があります。

昭和8年に芸者歌手・市丸さんが歌った新民謡「天龍下れば」で描かれた天竜川の舟下りは、大正6年に始まり、2021年に一時休止したものの現在は再開され、長野県飯田市の観光の目玉となっています。

【参考文献】
藤浦洸・著『なつめろの人々』(読売新聞社)


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2025/05/20(火)