懐かしい歌をギター生伴奏で

“古賀メロディー”の誕生を告げる1曲

曲名右の  ボタンから演奏動画を視聴できます。

酒は涙か溜息か

 
1931年(昭和6年)藤山一郎
作詞:高橋掬太郎
作曲:古賀政男

酒は涙か溜息か
心のうさの捨てどころ

遠いえにしのかの人に
夜ごとの夢の切なさよ

酒は涙か溜息か
かなしい恋の捨てどころ

忘れたはずの かの人に
のこる心をなんとしょう

 

北海道根室出身の詩人・高橋掬太郎氏は「酒は涙か溜息か」の詩を書いた昭和5年当時、函館の新聞社に勤めていました。親しくしていた芸者が廃業するときに、この詩を白扇にしたためて贈ったのは、彼女の心境にぴったりだと想像してのことだったそうですが、後にレコードが大ヒットすると、掬太郎氏が彼女に失恋してこの詩を書いたのだというエピソードがまことしやかにささやかれるようになったといいます。

昭和6年に発売されたレコードは大ヒット、独特の哀調・哀しみと頽廃のムードをたたえた“古賀メロディー”の誕生を告げる1曲となりました。

余談ですが、当時大阪のレコード会社でくすぶっていた服部良一氏は、このヒットに乗じたB級作品「酒は涙よ溜息よ」という曲を作らされるなど屈辱的な仕事を経験し、東京進出への気概が高まっていったということです。

【参考文献】
松尾健司『うたのいしぶみ:文学紀行 日本歌謡碑大系4』(ゆまにて)※
服部良一『ぼくの音楽人生』 (日本文芸社)
※国立国会図書館デジタルコレクション


投稿者:チャコ&チコの歌声喫茶
記事公開日:2025/09/23(火)